急激に注目を集めている Nostr ですが、まだ参加しているのは技術的な知識が十分ある人が多く、解説記事も技術的な基礎知識を前提として書かれています。プログラマでないとさっぱりわからないですね。ここでちょっとわかりやすい言葉でNostrとは何か、ということを書いてみたいと思います。専門知識と照らし合わせるとそれはちょっと違うという書き方もしますが、わかりやすさ優先です。
Nostr はざっくりいうとメールのようなもの
あまりにもざっくり過ぎますね。実際は Nostr とメールとは違うものですが、皆さんご存じのメールに置き換えるとわかりやすいと思います。 Nostr でいうところの公開鍵はメールアドレス、秘密鍵はパスワード、 Damus や iris といったクライアントはメールソフトですね。
メールと違うのはメールでは送信者が誰に送るかを指定しますが、 Nostr では受信者が誰の投稿を受け取るかを指定します。これがフォローです。そしてフォローしていない人でも発信者を指定すれば投稿を読むことができます。他にも違う点は多いのですが、ここが一番重要なのでこれだけ覚えて次に進みましょう。
Nostr は暗号資産ではない
Nostr はビットコイン関係者が開発したこともあり暗号資産とかブロックチェーンと誤解する人も多いようですが、暗号資産でもブロックチェーンでもありません。ブロックチェーンはチェーン状に繋がった台帳でできていますが、 Nostr はつながっていません。それぞれの投稿はつながっていなくて読む人が取捨選択します。その辺は届いたメールを送信者別にしたり日付別にしたりして見るのと同じようなものです。
Nostr 上でビットコインの送受信が行われていることも Nostr を暗号資産と勘違いする元のようですが、あれは単に Nostr のメッセージを通してビットコインの受信アドレスや請求書を送っているだけです。このビットコイン送受信の流れに乗るにもそれなりに知識が必要になってくるのですが、今回のテーマからは外れるので割愛します。
Nostr の秘密鍵は変更できない
正しくは秘密鍵を変更すると対応する公開鍵も変わる、ですね。メールだとパスワードが漏洩したら変更することができますが、 Nostr では秘密鍵と公開鍵はセットなので公開鍵を変更せずに秘密鍵だけ変えるということはできません。また、忘れたからと言って再設定もできません。今のアカウントを捨てて新しく作り直すしかなくなります。秘密鍵の管理はパスワード以上に注意が必要です。
秘密鍵も公開鍵も一定のルールに従って作成されるものなので、自分で勝手に作ることはできません。最初に参加するときにアプリがルールに従って作ったものを使うことになります。もっと原理的な話をすると、秘密鍵も公開鍵もすでにすべての組み合わせが存在していて、その中からランダムに1つを選ぶと、選ばれた瞬間にアカウントになります。この辺は数学的というより哲学的な話のようにも見えます。
Nostr でできることは限られている
Nostr でできることは送り手は秘密鍵でテキストデータに「署名」して送り出すだけです。受け手は公開鍵で誰の署名か判別するだけです。 SNS のように見えるとすればそれはアプリがそう見せているからです。メッセージのやり取りだけでなくプロフィール情報もこのやり方で送信しているのです。
Nostr ではよくある SNS のように画像を投稿することはできません。でも URL を文字として投稿することはできるので、別の場所に保存した画像の URL を投稿すれば、 SNS のようなアプリが画像を表示してくれます。すべてが外部に依存する分、外部でサポートすれば何でもできるとも言えます。
Nostr は何物にも縛られない
Nostr に必要なのは秘密鍵と公開鍵のペアだけです。メールアドレスも電話番号も本人確認も必要ありません。最初にアカウントを作成するときもランダムに秘密鍵が与えられるだけです。あなたは自由です。非合法なことであろうと誰も禁止しません。適法に活動しても害悪から守ってくれる人はいません。
ここが Twitter などと一番違うところです。 Twitter は Twitter 社が禁止することは禁止です。この中に違法行為も含まれます。 Twitter 社が禁止することをすればアカウントを凍結されます。違法行為に関して法執行機関から照会があれば Twitter 社は協力します。
しかし Nostr には管理者がいませんから、違法行為があっても誰も禁止しません。法執行機関が照会しようにも問い合わせ先すらありません。使い方がわからないと言ってもサポートセンターはありません。
違法行為を止める存在がないからと言って違法行為をしていいわけではありません。 Nostr からの追及がないだけで警察からの追及はあります。このあたりは電話やメールといった他のコミュニケーション手段と同じですね。電話やメールで犯罪行為の相談をすることを止めるのは難しいけれど、実際に犯罪行為を行えば追及されます。
Nostr はお金がかかる?
Nostr 自体はただの決まり事です。公開されているものなので利用にお金はかかりません。しかし、実際にサービスとして使うにはいろいろなところでコストがかかります。そして Google や Facebook のように広告をたくさん表示して稼いでいるわけではありません。
今のアプリや通信を支えるノードは無料で公開しているものがありますが、いつまでも無料かどうかはわかりません。すでに有料で利用するものも出てきているようです。
Nostr は安全?
これから Nostr に参加してみようかという人にとって一番重要なのはここでしょう。でもこの質問には答えられません。 Nostr はただのメッセージをやり取りする決まりごとに過ぎず、安全に使うかどうかは使う人次第だからです。
例えるならば1本の紐です。紐は荷物をまとめて縛ることもできれば自分の体が落ちていかないよう固定することもできる便利な道具です。半面、他人の体を縛って自由を奪ったり、首を絞めて命を奪うことすらできる危険な道具でもあります。
だからといってただの紐を恐れる人はいません。紐がどのようなものかはすでに知識があるので、悪意を持った人が紐を手にしたときだけ恐れればいいのです。
同様に、 Nostr もどのような使い方をされていくか注意深く見守って、安全かどうかを判断すればいいのです。
おわりに
Nostr とはどういうものなのかを専門知識がない人に向けて書いてみました。 実際には今使われている使い方以外にも Nostr の利用方法はあるのですが、この辺りは私も十分理解していないので割愛します。そもそもこの記事は他人に解説するためというよりは自分の考えをまとめるためのものですから。
また、ここでは Nostr の参加方法だとか設定方法等についてはここでは触れていません。それはまた別の機会があれば書いてみたいですが、具体的な手段はわかりやすい解説がすぐに出てきそうです。